愛車チビタの話

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総額30万の黒いワゴンR

 

車を買うきっかけ

 

自分が車を買うとは思っていませんでした

免許すら持っていなかったし、取る気もなかった

 

始まりは長女

高校卒業した途端にバイトを始めて

(娘たちの高校はバイト禁止でした)

 

長女
長女

車の免許取るね

 

免許を取ったら今度は

 

長女
長女

車、買いたい!

 

こばゆき
こばゆき

えーっっつ! そんな贅沢な! 駐車場借りるだけでも月1万かかるよ!

 

当時住んでいたのは駅から徒歩10分ほどのマンション

足と自転車で全て事足りてました

自家用車なんて、とんでもない贅沢に思えたのです

 

 

新たな家族

 

長女は諦めませんでした

 

長女
長女

車代はバイトで少しずつ返すよ

お母さんとSちゃん(妹)乗せてドライブしたいな

雨の日、Sちゃんを送り迎えしてあげたいな

 

当時次女は電車代を浮かすために片道10キロの道を自転車通学していました

(長女も同じ高校だったので3年間自転車通学でした)

 

妹を車で送迎してあげたいとの言葉に、私は感動しました

 

そして娘が「これなんかどう?」とスマホ画面を見せてきた時……

 

画面に写るその車を見た瞬間

 

(あら、可愛い!)

 

なぜだか心が動かされました

 

そしてトントン拍子に購入に至り、我が家に車がやってきました

 

それがチビタです

(特別名付けたわけではないのですが、いつの間にかみんなでそう呼ぶようになりました)

 

長女が楽しそうに運転しているのを見て私も運転したくなり

免許を取ることにしました

 

クリスマスの奇跡

神奈川県警からの封書

 

チビタが来た年のクリスマス

その日、接骨院の仕事が終わり、居酒屋のバイト先へ向かう前に携帯を見ると長女からメールが来てました

 

『神奈川県警から手紙が来てるよ』

 

その文字を見た時に最初に思ったのは「何か落とし物でもしたのかな?」でした

 

あまり気にもならず『開けていいから、中身教えて』とメールを返してから自転車に乗って、次の仕事場へ向かいました

 

ところが自転車をこいでいると、今度は携帯の電話がなったのです

電話に出ると長女の慌てた声が聞こえてきました

 

『大変! うちのチビタが当て逃げしたって書いてある!』

 

 

こばゆき
こばゆき

……どういうこと?

 

 

夜遅くに帰宅し、娘たちが用意してくれたケーキやチキンを食べながら、神奈川県警からの手紙を読みました

 

そこには、その年の9月に神奈川県相模原市の交差点で当て逃げした車があり、ナンバーと車種がチビタに一致すると書かれていました。

 

長女
長女

お母さん、相模原市に行ったことある?

こばゆき
こばゆき

ないよ……っていうかこの日付、私が免許取ったすぐ後だよ

近所走るのがやっとなのに、そんな遠くに行けないよぉ

 

私達は2人とも相模原市に行ったことはありませんでした

 

念の為に私と娘は手帳をめくり、当て逃げ事故があったその日時に何をしていたか確認しあいました

 

娘は大学の講義があったし、私も仕事でした

チビタが盗難にあい、当て逃げしてまた戻されない限り不可能です

 

長女
長女

ここから、相模原まで3時間かかるんだね

そんな長距離ドライブ、いつかしてみたいな

 

娘はGoogleマップを見ながらのんきに笑っていましたが、

私には『相模原』という地名に引っかかりがありました

 

それは誰にも言ったことのない、ずっと忘れていた私の苦い過去でした

 

 

警察官がやってくる

 

翌日25日の昼休み、私は相模原警察署に電話をかけました

担当の警察官に「私達には当て逃げした覚えがない」と話すと、

 

警察官
警察官

子供のいうことなので、どうかと思ったんですが、ナンバーも車種も一致するので、一度車を見せて下さい

こばゆき
こばゆき

……わかりました

 

そして二日後、やってきた警察官は2人で私服姿でした

車もパトカーじゃなく、普通の車

 

警察官の1人はチビタを見て回り、もう1人が私と長女に事情を聞きました

 

長女はなんだかおもしろがっている様子で、始終私に代わって対応してくれました

 

長女
長女

子供が被害者なんですか? かわいそうですね

親御さんは心配でしょうね

 

私達、相模原どころか、近所しか運転したことないですよ

家族の誰も相模原に行ったことないんです

 

警察官
警察官

そうなんですか

こばゆき
こばゆき

……

 

「家族の誰も相模原に行ったことがない」と娘が警察官に話した時、私の胸は痛みました。

 

言うべきか、どうか……

 

実は、私は相模原に行ったことがあったのです……

行ったというか、いたことがあるのです

 

事故が起きたという相模原市のその町に……

 

こばゆき
こばゆき

(でもこの件とは全く無関係だし……こんなこと言って話をややこしくしてもしょうがないよね……)

 

どんな映画やドラマを観ても、警察に嘘ついていいことなんか何もないけど、

無関係な話を聞かされても、警察の人も困るだろうし……

 

いろんな考えで頭がグルグルしていると、

チビタを調べていた方の警察官が仕事を終えてやって来ました

 

警察官
警察官

ご協力、ありがとうございました!

 

そして何事もなく、2人の警察官は帰っていったのです

 

 

長女
長女

守秘義務なのか、事故に関して詳しいことは教えてもらえなかったけど被害者は子供じゃないみたい

 

事故を目撃してチビタのナンバーを言ったのが子供なのかもね

 

娘はそんなことを推察していましたが、

私は全く別の事でモヤモヤしたものを抱えていました

 

 

会ったことのない父親

 

また相模原署から連絡がくるのではないか……

怖さと期待が混ざったような思いで年を越し

 

明けて翌年の2月、妹から電話がありました

 

私の実父が前の年の暮れに亡くなっていたという知らせでした

 

妹の言葉を聞きながら、私は不思議な符合に力が抜けました

実父が住んでいたのは神奈川県相模原市のあの事故のあった交差点のある町だったのです

 

私の生まれはちょっと複雑で、私の母親は私を産むとすぐに私を置いて、実家に帰ってしまいました

私の実父は私を乳児院に入れると、すぐ他の女の人と再婚したようです

 

母も過去を隠して別の人と再婚しましたが、親戚から非難され、私を引き取りました

私が4歳で実母に引き取られた時、その家には母だけでなく新しい父とその間に産まれた妹がいたのです

 

つまり私は赤ん坊の時、ほんの一時、相模原市にある実父の家にいたのです

 

全く覚えていない実父の住む町の名前を私に告げたのは、よく知らない親戚でした

 

「おまえの本当の父さんはここにいる。会いたいだろう」

 

そう言われ、実父の住所が書かれ年賀状を見せられましたが、

私には実父に会いたいなどという気持ちは欠片もありませんでした

 

私にとっての父親は、自分の妻が散々子供を殴ったり蹴ったりしているのに、平然とビールを飲みながら巨人戦を観ていられる、血のつながらない男だけだからです

 

そして一年後

 

私の実父が亡くなった話は、娘たちには言いませんでした

生きていようが、死んでいようが私にとってはどうでもいい男だったからです

 

 

ところがその年のクリスマスの夜、

家族でケーキを突っついていると、前の年のチビタの当て逃げ事故の話が出ました

 

長女
長女

あの事故、どうなったんだろうね?

解決したのかな?

 

そしてお酒が入っていたせいか、私はポロリと実父が亡くなった話を娘達にしてしまったのです

 

こばゆき
こばゆき

……実はね、お母さん、あの町に縁があるんだ……

 

若い女の子というのは、スピリチュアルな話が好きで……

私の話を聞いて、大騒ぎになりました……

 

 

次女
次女

当て逃げを目撃したって通報した子供は、チビタだったんじゃない⁉

長女
長女

お母さんのお父さんが、死ぬ前に自分のことを思い出してもらいたかったんだよ

 

 

などと娘たちが盛り上がる中、私はしらーっとお酒を飲み続けました

 

でも次女に言われた言葉に泣かされました……

 

次女
次女

お母さんは、ずっとその相模原の住所を覚えていたんだね

 

これを聞き、涙が溢れて止まらなくなりました

 

長女は、新しいコップをもってきて、私が飲んでいた缶チューハイを注ぎました

 

新しいコップに向かい3人で乾杯をしました

 

「おじいちゃん、メリークリスマス!」

 

 

いまこうして書いていても不思議な話ですが

あの時やってきた警察官に私の過去話を打ち明けたら、あの2人はどう反応したんでしょうね

 

こばゆき
こばゆき

そのことを考えると、ちょっと笑える

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